2006年11月15日

大城立裕「カクテルパーティー」を読む

大城立裕「カクテルパーティー」を読む

大城立裕氏は1925年中頭郡中城村に生まれた。
生家は屋宜祝女殿内。
上海の東亜同文書院大学中退。

作品「カクテル・パーティー」は
琉球政府経済企画課勤務中の1965年書き、
「新沖縄文学」第4号で発表し、1967年芥川賞受賞。

丁度、沖縄の政治的復帰運動の高まりの中での、
受賞だったようだ。


作品は前章、後章に別れている。
前章では主人公「私」から、
後章では「お前」に人称が変化しており、
只ならぬ事態の変化を読み取れる。


前章では、
主人公「私」は、
アメリカ軍基地内のミスター・ミラー宅での、
招待された「カクテル・パーティー」に出席し、
中国語クラブ仲間の、
アメリカ人・ミスター・ミラー、
中国人弁護士の孫、
日本人全国紙記者の小川、
そして沖縄人の「私」の4人が、
パーティー会場で談笑に興じる。

前章で、仮面のカクテル・パーティー四人の登場人物が、
”本音と建前のギリギリのせめぎ合い”の中、
仮面の人間関係を崩すことなく終わったかに見えた。


後章、仮面のパーティーが行われていた丁度、その頃、
主人公「お前」の娘に、
M岬で身の上の事件が起こっていた。



「お前がパーティーから微燻をおびて帰宅した時、
娘はもう床をとって横たわっており、
妻が緊張した表情でお前を迎えた。
妻は、娘が脱いだ制服をお前に示した。
ところどころが汚れ破れていて、
それだけでもう、
お前は大きな事故が起こったことを理解させられた・・」




後章の進行とともに、4人の仮面が徐々に剥がれていく!



お前 「孫先生。私を目覚めさせたのは、あなたなのです。
お国への償いをすることと、
私の娘の償いを要求することとは、ひとつだ。
このクラブへ来てから、
それに気づいたとは情け無いことですが、
このさいおたがいに絶対的に不寛容になることが、
最も必要ではないでしょうか。
私が告発しようとしているのは、
ほんとうはたった一人のアメリカ人の罪ではなく、
カクテル・パーティーそのものなのです。」
ミラー 「人間として悲しいことです。」
お前 「ミスター・ミラー。布令第144号、刑法並びに訴訟手続法典第2・2・3条をご存知ですか?」
ミラー 「第2・2・3条?」
お前 「あとでみてください。合衆国軍隊要員への強姦の罪。
あれがある限り、あなたの願望は所詮虚妄にすぎないでしょう。
さようなら。」




現在でも、沖縄が「基地の島」であることに変わりないことを、
今回の沖国大米軍ヘリ墜落事故以降の全てが語ってはいないだろうか?

風人は”仮面の中に隠された真実”を今も無視することは出来ません。


同じカテゴリー(琉球文学を読む)の記事

Posted by パイパティローマ at 10:17│Comments(0)琉球文学を読む
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。