2006年01月22日

知念正真の戯曲「人類館」を読む


沖縄海洋博覧会が開催され、
皇太子来沖火炎ビン事件があった1975年。

翌年の1976年、
新沖縄文学に知念正真の「人類館」が発表となる。
翌年1977年、「テアトロ」に転載され、
劇団「創造」によって、沖縄県内外で上映され、
演劇界の芥川賞、「岸田戯曲賞」を1978年受賞した。

知念正真の戯曲「人類館」を読む

戯曲「人類館」は、
調教師ふうな男、
陳列された男、
陳列された女、
の登場人物が、
それぞれ場面場面で変身を繰り返しながら、
ウチナーヤマトグチで展開される。

劇中で繰り返される滑稽で、居た堪れないほどの、
突き抜けるアジテーション!



  調教師ふうな男が、鞭を一振りすると、
舞台が明るくなる。

調教師 お待たせいたしました。こちらが琉球館でございます。琉球の原始的住民は、アイヌ系のアマミキヨ種族でございます。その昔、西南フィリピン諸島、台湾方面から北上して来た種族と、九州、奄美大島方面から南下してきた種族が、混合、調和することによって成立したものであります。
  
  調教師ふうな男は、陳列されている男に近づき、
鞭で顎をしゃくりあげる。
  男はふてくされているようにも見え、
妙に従順に見えなくもない。

調教師 ご覧下さい。まず最初の特徴は、このように顔が四角で鼻が異常に大きく、横に広がっているという事であります。俗に言う獅子っ鼻。これが非常に多い。

  男は大勢の視線を支えきれず下を向いてしまう。
すると突然、調教師風な男の鞭が鋭く唸り、
男はあわてて姿勢を正す。

調教師 眼をご覧頂きたい。およそこの男のこの顔には不釣合なくっきりと大きな腺病質な眼、まるで神経症病みのような、おどおどした眼、これも一つの特徴でございます。こいつのように顔が四角で、顎のエラが張っているのを琉球の言葉で・・・・、
 (詰まる。と、男に眼で促す)

陳列された男 (ボソッと)ハブカクジャー・・・・。
調教師 ハブカクジャーと申します。ハブというのは琉球に棲む毒蛇のことですね。毒蛇の顎という意味でございます。



作品は徹底的に、政治的不条理さを、
アジテーションし続ける・・・
この激しさは何処から来るのか・・・


知念正真はいう。
「なんと沖縄の歴史の、暗く、やるせないことか。救いようもない惰民の、被虐の歴史の、際限のない連鎖。中でも「人類館事件」の荒唐無稽。人間が人間を見世物にしたという、信じがたい事実。ここまで来れば、もう怒りを通り越して、笑うしかない。私はこの「人類館」をモチーフに、沖縄の近・現代を網羅した芝居を書こうと思い立った」


戯曲「人類館」は、
善きにつけ、
悪しきにつけ、
文学の地平から、撃った、
最も先鋭的なアジテーションの文学ではないだろうか。



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Posted by パイパティローマ at 16:36│Comments(2)琉球文学を読む
この記事へのコメント
あーーーこれ
舞台で沖縄で上演もありみましたし
沖縄ではTVで特集も何度かありました

琉球人を展示したという事実に衝撃でしたーーー。
Posted by 上等沖縄司会屋 at 2006年01月26日 00:10
記憶の向こうに、
微かに「人類館」の看板がちらつきます。

今一度、
劇団「創造」の芝居を、
琉球弧で観たいです。

異様な激しいアジを感じたいです・・・
Posted by 石垣島の風人 at 2006年01月27日 10:46
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